
デジタル化の注意点は?
発想の転換
デジタル化の必要性について検討が済んだ会社は、いよいよデジタル化に着手することになります。ですが実際に進めると、いろんな悩みが次々と出てきます。本稿では、デジタル化を進める会社にとって、考慮すべき重要なポイントを整理します。
まず社内体制ですが、最も重要なことはトップである社長の関与です。社長は最初に号令をかけるだけで、あとはIT部門や経営企画部門に丸投げするという話はよく聞きますが、たいていは失敗します。ITの知識や技術がないと、DXに関与できないという誤った発想から、まず変革する必要があります。
DXで最も大事なことは変革の方向性であり、技術や知識ではありません。会社の歴史的沿革、市場での評価、技術力、同業他社との比較などを勘案して、次に進むべき方向を示すべきは社長であり、その決断を他者に委ねることは許されません。
次に、DXを進めるためには、ITの専門家がいないとできないと思われがちですが、むしろITの技術的専門性や経験などは、以前ほど重要とは言えなくなっています。それは技術の発達により、ローコードやノンコードといった、プログラミングの専門知識を必要としない(または初歩的な知識だけで済む)アプリケーションが多数開発されているからです。少し乱暴な例えになりますが、子供がレゴブロックで遊ぶのと同じ感覚だと言ってもいいでしょう。
社長が新しい会社の姿をイメージして、それをブロックで造形するようにアプリケーションを組み合わせていくという感覚だとすれば、技術や知識がないからといって恐れることはないでしょう。
最後の重要なポイントは、特に中小企業の方に申し上げたいのですが、現存する道具(アプリケーション)を上手に使いましょうということです。デジタルの可能性は無限に広がっていますが、万能ではなく、社長が考える変革の方向性にまだ技術が追いついていない場合もあります。AIの学習機能や、画像認識や解析の技術などは、日進月歩で進化していますが、技術は常に、次々と生まれる新たな願望に追われる宿命です。これが資金の潤沢な超大手企業であれば、多額のプロジェクト予算をかけて技術的な願望を叶えてしまうこともありますが、中小企業であれば現存する技術をうまく組み合わせて、合理的な現実解を導きだすという柔軟な発想が必要になります。